【連載】天文学と音楽 第四回


第四回 科学に必要な感性。アートに必要な理性。

奥村:
個人的に天文学と音楽が別のものだって思われている原因の一つは理性と感性の問題なんじゃないかって気がするんですよね。天文学は「理性や理論の分野」、一方で音楽は「感性やアートの分野」、というふうに交わらないものだと。このようなイメージについてはどのようにお考えですか?

高梨:
天文学は論理的な学問だと思われているだろうし、実際数学というロジカルな言葉で表現するんだから当然といえば当然なんだけど、かといって科学は理性だけかと言われるとそうでもない気がします。ニュートンの引力の発見は、理性的に考えると時代の流れとして必然的に万有引力の考え方が登場したと言えます。一方で、科学における数々の発見の中には、なんでこのアイデア同士が結びついたんだろうという話もあったりする。
奥村さんも研究していて感じたことがあるかもしれないけど、最先端の研究ほど感性的なもの、具体的には様々な物事をつなぎ合わせるセンスが必要な時が多いんじゃないかなと考えることはあります。

奥村:
それは確かに思いましたね(笑)。宇宙物理学の研究では、別々の分野の現象を組み合わせることで問題の突破口を見出す研究結果が多く見られます。
「別の分野の方法を使ってこの課題も解決しよう」みたいに、課題解決に異分野のつなぎ合わせのセンスが役立つことがある気がします。

佐古:
奥村さんの質問をかみくだくと「理論だけで綺麗な音楽は作れるのか」みたいな問題になるんですかね。高梨さんと似たような答えになりますが、音楽が完全に感性で作られるかというとそうではないと思っていて、それこそ音楽理論では気持ちのいい和音の作り方などの知見が集約されていますから、ちゃんと音楽を理論として勉強すると、誰でもある程度は綺麗な音楽は作れます。ただそれがヒット作になるかというとそれはまた別の問題な気がしますね。

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奥村:
今IBMのワトソンみたいな人工知能に料理のレシピを作らせてみようとか、病気の診察をさせてみようとか、そんな話が話題になっていますが、そのうち科学や作曲の営みがコンピュータで代替出来るのかといった話も出てきそうですね。


第一回 「世界の真理」への好奇心から生まれた天文学と音楽
第二回 きっかけは17世紀。独自の進化を遂げる天文学と音楽。
第三回 西洋から来たものを日本人がやる意味とは?日本人のクリエイティビティとは?
第四回 科学に必要な感性。アートに必要な理性。
第五回 これからの宇宙の音の探求
第六回 科学者と音楽家の考える生活の豊かさについて